「ショウイチさん」と「マサイチさん」

時折青空が広がって日が照ったと思うと雨や雪に変わる忙しい天気で,ジムに行く時には車のフロントガラスにミゾレが少し溜まっていた。

20代の頃,加工母船に乗船してたときの話し。
母船の乗組員は,陸上社員で構成する事業職員,魚の加工を行う事業員,それに船を運航する大型船員の3つに分けられる。人数は圧倒的に事業員が多く,北海道,青森,秋田,岩手,宮城,山口,長崎などいろいろな所から来ていた。
その昔,事業員に「ショウイチさん」という人がいて,乗船中は一回も風呂に入らずにいたらしい。そのため,「今日,俺はショウイチさんだ」というと,「今日は風呂に入らない」という意味になる。
また,事業員から飲み会に誘われ,「風呂に入るから遠慮する」というと,「風呂に入って死んだ人はいるけど,入らないで死んだ人はいない。ショウイチさんはいつも元気だったゾ」と言われ,誘いにのるしかなかった。

「マサイチさん」という人もいたようだ。「マサイチさん」はいつもコソコソ一人で美味しいものを食べてるので仲間から敬遠されたらしい。一人で何か食べていると,「おお,マサイチさんになったのか」とからかわれた。

「ショウイチさん」も「マサイチさん」も本当に居たかどうか定かでないが,隠語として最後の乗船まで伝わっていた。